<農家住宅(市街化調整区域)の基礎知識⑦>田んぼや畑に農家住宅を建てる際は農地転用は必要?
ここで、こんな疑問が出てきます。
「農家が自分の田んぼに農家住宅を建てるんだから、そのまま建ててもいいんじゃないの?」なんとなく、そんな感じがしますよね。
でも、農家住宅と農地転用は別の話です。
今回は、田んぼや畑に農家住宅を建てる場合の農地転用について見ていきます。
そもそも農地転用って何?
田んぼや畑は、農作物を作るための土地です。そこに住宅を建てると、その部分は田んぼや畑として使わなくなります。
つまり、農地 → 住宅の敷地に土地の使い方を変えるわけです。
このように、農地を住宅、駐車場、資材置場など、農地以外の用途に利用することを農地転用といいます。
農家住宅も「住宅」です。そのため、農地に農家住宅を建てる場合には、農地法上の農地転用について確認する必要があります。
「農家住宅は許可不要」じゃなかったの?
ここが少しややこしいところです。これまで、一定の農家住宅は、都市計画法上の開発許可が不要になるというお話をしてきました。
すると、「許可不要なら、そのまま建てられるんじゃないの?」と思いますよね。
でも、これは都市計画法の話です。
田んぼや畑を住宅敷地にする場合には、今度は農地法を確認します。
つまり、都市計画法ではどうなの?そして、農地法ではどうなの?
この二つは別々に確認する必要があります。「農家住宅だから全部の許可がいらない」という意味ではないんですね。
自分の農地に自分で建てるなら?
たとえば、自分が所有している田んぼがあります。その一部を住宅敷地にして、自分の農家住宅を建てたい。
このように、自分の農地を自分で農地以外の用途に転用する場合に関係するのが、農地法第4条です。
市街化調整区域の農地では、原則として農地転用の許可が必要になります。
ですから、「自分の田んぼなんだから、自分で好きに使っていいでしょう」とはならないわけです。
親の田んぼに子どもが建てる場合は?
では、「父親の田んぼに、息子が農家住宅を建てたい」という場合はどうでしょうか。この場合には、土地をどのように利用するのかを確認します。
たとえば、
・土地を贈与する
・売買する
・使用貸借などで利用する権利を設定する
このように、農地について権利の設定や移転を伴って転用する場合に関係するのが、農地法第5条です。
ただし、「親の農地に子どもが建てる=必ず5条」と名前だけで判断するものではありません。
・土地の所有者は誰なのか
・誰が住宅を建てるのか
・どのような権利で土地を利用するのか
実際の権利関係を確認して、4条なのか5条なのかを判断します。
田んぼ全部を宅地にするの?
たとえば、3,000㎡の田んぼがあったとします。その一部に農家住宅を建てたい。
「せっかくだから3,000㎡全部、住宅敷地にしてしまおう!」……とは、なかなかなりません。
農地転用では、
住宅
庭
駐車スペース
進入路
排水施設
など、計画に必要となる範囲を考えます。
そして、「農家住宅を建てるために、なぜこの面積が必要なの?」ということも確認されます。
必要以上に広い農地を、「とりあえず全部転用しておこう」というわけにはいかないことがあります。
一部だけ使うなら、先に分筆する?
大きな田んぼの一部だけを住宅敷地にするなら、「じゃあ、先にその部分を分筆しておけばいいんだ!」と思いますよね。でも、いきなり分筆を進めるのではなく、まず住宅計画を整理することが大切です。
・住宅はどこに配置するのか
・駐車場はどこにするのか
・道路からどう入るのか
・排水はどうするのか
農地として残る部分はどうなるのか、そして、どこまでを住宅敷地として転用する必要があるのか。
こうしたことを整理したうえで、農業委員会などに事前確認し、必要に応じて測量や分筆を進めます。
分筆が必要になれば、土地家屋調査士が関わってきます。
その田んぼ、「青地」じゃない?
農地転用を考えるときに、もう一つ重要なのが、農振農用地です。
いわゆる「青地」と呼ばれることもあります。
簡単にいうと、「この土地は、これからも農業に利用していきましょう」と位置付けられている農地です。
農振農用地は、原則として農地以外の用途に利用することができません。
そのため、農家住宅を建てるために転用したい場合には、農地転用の前に、農用地区域から外す手続きが必要になることがあります。
これが、いわゆる農振除外です。
「青地なら農振除外すればいい」?
ここも注意です。「青地だった!」「じゃあ農振除外を申請しよう!」となりそうですが、申請すれば必ず農振除外できるわけではありません。
農用地区域から外すためには要件があります。
そのため、農家住宅の予定地が農振農用地だった場合には、「この土地は農振除外できる可能性があるのか?」というところから確認します。
場合によっては、別の土地に建てることを検討した方がよいということもあります。
農振除外→農地転用→家を建てる?
大まかなイメージとしては農振農用地の場合、
農振除外
↓
農地転用
↓
住宅建築
という順番を想像すると分かりやすいと思います。
ただし、実際の農家住宅の計画では、これだけを順番に進めればよいわけではありません。
・都市計画法
・建築基準法
・道路
・造成
・その他の関係法令
・建物の設計
こうした確認もあります。
そのため、農振除外だけを先に進めたり、農地転用だけを先に進めたりするのではなく、住宅計画全体を見ながら必要な手続きを調整していくことが大切です。
農地転用の許可が出たら、すぐ工事?
農地転用の許可が出た。「よし!これで家を建てられる!」と思いますよね。
でも、農地転用許可=住宅を建築してよいというすべての許可ではありません。
農地転用は、あくまで農地法上、「この農地を住宅敷地として利用する」ための手続きです。
そのほかにも、建築確認や造成関係など、計画に応じた手続きがあります。
それぞれ必要な手続きが整ってから、工事へ進んでいきます。
農家住宅と農地転用は別々に考える
今回の一番大切なところは、農家住宅として建てられること・農地を住宅敷地として転用できることは別の話だということです。農家住宅だから、農地を自由に住宅敷地にできるわけではありません。
農家住宅を建てたい土地が田や畑なら、
・まず農地の状況を確認する
・農振農用地なのか確認する
・必要な転用面積を考える
・4条なのか5条なのか確認する
・必要に応じて測量・分筆を検討する
こうして一つずつ整理していきます。
「農家なんだから、自分の田んぼに家くらい建てられるでしょう」と思ってしまいそうですが、実際には農地を守るためのルールがあります。
だからこそ、家の設計や土地の造成を進める前に確認しておくことが大切です。
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2026年08月11日 17:53
