<農家の相続シリーズ(農家相続の現実)>①農地相続はなぜ揉めやすいのか?
こんにちは、農地専門の行政書士の大場です。
突然ですが、こんな会話を聞いたことはありませんか?「この田んぼ、お前が継ぐんだぞ。」
「え?いや…農業やる予定ないけど。」
「じゃあ、この土地どうするんだ?」
場の空気が、一瞬止まります。
実はこのやり取り、特別な家庭の話ではありません。
どこにでもある、ごく普通の家族の会話です。
そしてここから、農地相続の悩みが始まることがあります。
今日は少しだけ現実の話をします。
怖がらせたいわけではありません。ですが、知っているかどうかで将来は大きく変わります。
農地は「ありがたい財産」とは限らない時代
ひと昔前、土地はこう言われていました。「土地があれば安心」確かにその通りだった時代があります。
ですが今は少し状況が変わりました。
場所によっては・・・
・買い手が見つからない
・借り手もいない
・それでも税金はかかる
つまり、持っているだけで負担になる農地も増えているのです。
ここでよくあるのが、親世代と子世代の価値観の違いです。
親世代にとって農地は、長年守ってきた大切な財産。
一方で子世代は、心の中でこう思っていることがあります。
「正直、もらっても困るかもしれない…」
誰が悪いわけではありません。
ただ、時代が変わったのです。
この小さな認識のズレが、相続のときに大きな問題へと発展することがあります。
「平等に分ける」が難しいのが農地
相続といえば「平等に分ける」ことが基本です。
とても大切な考え方です。
例えば三人兄弟で農地を分けたとします。
一見、丸く収まったように見えますが・・・
・面積が小さくなる
・形がいびつになる
・機械が入りにくくなる
では、一人がまとめて相続すればよいのでしょうか。
すると今度は、こんな気持ちが生まれることがあります。
「兄だけ土地をもらって不公平では?」
相続は財産の問題であると同時に、感情の問題でもあります。
だからこそ難しいのです。
実は一番多い原因は「何も決まっていない」こと
農地相続で揉めるケースには、ある共通点があります。
それは・・・
事前に何も話し合われていないこと。
・誰が継ぐのか・継ぐ人がいない場合どうするのか
・売る可能性はあるのか
・貸すという選択はあるのか
こうした話題は、どうしても後回しにされがちです。
「まだ元気だから大丈夫」「縁起でもない話はしたくない」
ですが相続は、ある日突然やってきます。
準備がないまま大切な決断を迫られると、人は冷静ではいられません。
それがトラブルにつながるのです。
逆に言えば、方向性だけでも見えているご家庭は、驚くほど揉めません。
「とりあえず共有」は本当に安心?
話し合いがまとまらないとき、よく出る結論があります。「とりあえず共有名義にしておこう。」
一見、平和的な解決策に見えます。
ですが、将来を考えると注意が必要です。
共有の農地は・・・・売るにも全員の同意が必要
・貸すにも全員の同意が必要
・一人でも反対すれば前に進まない
さらに世代が変わると相続人が増え、関係はより複雑になります。
気づいたときには、誰も動かせない土地になっている。
これは決して珍しい話ではありません。
大切なのは「元気なうちに方向性だけ決めておくこと」
農地相続の対策というと、難しく感じるかもしれません。
ですが最初に必要なのは、完璧な答えではありません。
方向性だけで十分です。
・継ぐ人はいるのか
・いないならどうするのか
これを一度話しておくだけで、将来の安心は大きく変わります。
相続対策とは、財産を守ることでもありますが、同時に家族の関係を守ることでもあると私は考えています。
だからこそ次の世代へ渡すときは、「困る土地」ではなく、納得できる形にしておきたいものです。
もし今、
・子どもが農業を継がないかもしれない
・この農地の将来が少し気になる
・相続について考え始めている
そんなお気持ちがあるなら、早めに一度整理してみることをおすすめします。
それが未来の安心につながります。
